秩 父 の 方 言 2

**  秩父のことばは、一見乱暴そうだが、なかなか味わいの深いものがあります。ここでは、夏にちなんだ、秩父地方の「独特なものの呼び方」を載せました **
1 川で釣りいしてたら、今日は、にがっぱいっぺえ釣れたよ。
 「釣りをしていたら」とは、いわずに、「つりいしていたら」となまります。「にがっぱ」とは、「オイカワ」「ヤマベ」などといわれる魚です。荒川には、秩父の人たちが「ザコ」という「ウグイ」と「オイカワ」がたくさんいます。主に、オイカワは、川の水面に近いところの、ウグイは深いところのエサを食べるというように、住み分けをしているようです。
 「川で釣りをしていたら、今日は、オイカワがいっぱい釣れた。」という意味です。 
2 草刈いしてたら、あしっつるしに刺されて、いたくて、いたくて、たまんねえ。
 「あしっつるし」とは、「足長蜂(あしながばち)」のことをいいます。この蜂が飛んでいる姿が、足をぶらんと吊り下げている様に見えるので、この名前がついたと思われます。
 「草刈をしていたら、足長蜂(あしながばち)に刺されて、いたくて、いたくて、たまらない。」という意味です。
 ちなみに、秩父では、蜂が高いところに巣を作った年は、台風が来ない。地面に近いところや物陰に作った年は、台風が来るといわれています。
 今年の巣の高さは、どうでしょうか? 注意して観察してみてください。
3 ことしゃあ、早くから、じいやきが鳴くなあ。
 「ことしゃあ」とは、「今年は」がなまったものです。「じいやき」とは、ニイニイゼミのことです。このセミは、焼け付くような暑い夏の日に「ジー」と鳴いているので、「じいやき」といわれるのではないでしょうか。ちなみに「ひぐらし」は「カナカナ」、「つくつくほうし」は「オーシンツク」といいます。いずれも、その泣き声が名前になったものです。
 「今年は、早くから、ニイニイゼミが鳴きますね。」という意味です。
4 こじゅうはんたらし焼きい、食ったら、腹がくちくなったよ。
 「こじゅうはん」とは、「小昼飯」、つまり、「おやつ」のことです。「たらし焼き」とは、長ネギ、青ジソ、秩父味噌、砂糖少々を小麦粉で溶いて、油をひいたフライパンに「垂らし込んで」焼く、一種のホットケーキです。「くちい」とは、「空腹でなくなる」という意味です。
 「おやつに、たらし焼きを食べたら、お腹が一杯になった。」といった意味です。
5 ことしゃあふえんどうが、軒下(のきした)に巣う作りゃあがって困った。
 「ふえんどう」とは、スズメバチのことをいいます。この大型の蜂は、「ブーン」という恐ろしい羽音(はおと)を立てて襲(おそ)ってきます。これに刺され、ショック症状を起こして死ぬ人んだ人もいるそうです。蜂に刺されると、一度めより二度め、二度めより三度めと、症状が重くなるので注意が必要です。
 筆者も、この蜂に刺されたことがありますが、3日間、頭の痛みと発熱で寝たきりになりました。それ以来、この蜂には、二度と刺されないよう注意しています。
 「今年は、スズメバチが軒下に巣を作ってしまって困った。」という意味です。
6 雨が降ったら、めめんたろうが、いっぺえ出できた。
 「めめんたろう」とは、「ミミズ」のことです。
 「雨が降ったら、ミミズがいっぱい出てきた。」という意味です。
7 菓子い置いといたら、ありんどうが、えら、たかって、食えなくなった。
 「ありんどう」とは、「アリ」のことです。「たかる」とは、「寄り集まる」ことです。
 「えら」とは、「たくさん」とか、「いっぱい」とかいう意味です。
 「お菓子を、置いておいたら、アリがいっぱい寄り集まってしまって、食べられなくなってしまった。」という意味です。
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