秩 父 の 方 言 | ||
** | 秩父音頭(ちちぶおんど)には、『♪そうとも、そうとも、そうだんべ♪ あちゃ、むし、だんべ、につるし柿(かき)♪』という合いの手があります。秩父の方言は、この「あちゃ」「むし」「だんべ」だというわけです。 しかし、最近では、「だんべ」以外は、ほとんど聞くことができなくなりました。 「むし」といのは、「きょうは、あついむし。」というように、「きょうは、あついですね。」という意味で使われました。 つぎに、秩父の特徴的(とくちょうてき)な言葉を載(の)せました。 |
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1 きょうは、ひがっぷしくて、たまんねえ。 | ||
「ひがっぷしい」とは、「まぶしい」という意味で、「たまんねぇ」とは、「たまらない」という意味です。 「きょうは、太陽(たいよう)が、まぶしくて、たまらない。」といった意味です。 | ||
2 うちのけえどには、でっけえ栗の木があるんだ。 | ||
「うち」とは、「家」のことです。「けえど」とは、「囲い戸」のなまりで、敷地内のことをいいます。 また、「でっけえ」とは、「でかい」「おおきい」という意味です。ですから、「私の家の敷地内には、大きな栗の木があります。」という意味になります。 さらに、「敷地内」のことを「背戸(せど)」ともいいます。 |
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3 朝づくりに、草刈りをしてくるべえ。 | ||
「朝づくり」とは、朝食の前に、一仕事してくることです。「朝めし前に、草刈りをしてこよう。」といった意味です。 | ||
4 あそこんちも、総領(そうりょう)が、けえってきたから、安気になったんべえ。 | ||
「あそこんち」とは、「あそこの家」のことです。「総領(そうりょう)」とは、長男のことをいいます。 「けえってきた」とは、「帰ってきた」のことです。「安気(あんき)」とは、「安心した」という意味です。 「あそこの家でも、長男が家に帰ってきて、働くようになったから、安心しただろう。」というような意味です。 お年よりは、家の跡を継ぐのは「長男」という考えがあり、長男が家を出るのを嫌います。 |
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5 坂道で、いしぐるまいのって、つんのめって、ひでぇめにあった。 | ||
「石車(いしぐるま)に乗る」とは、「小石の上に乗ったら、小石が転がって、自分も転ぶこと」をいいます。また、「つんのめる」とは、「前のめりに転ぶ」こと、「ひでえ目に会う」とは、「ひどい目に会う」という意味です。 「坂道で、小石を踏んだら、前のめりに転んで、ひどい目に会った」といった意味です。 |
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6 こんなところでいどねをしちゃあ、かぜをひいちまうベえ。 | ||
「いどね」とか「いどころね」とかいうのは、きちんと布団(ふとん)の上に寝るのではなく、畳(たたみ)の上や、縁側(えんがわ)などで、寝てしまうことをいいます。 「こんなところで『うたた寝』をしたら、風邪(かぜ)をひいてしまうでしょう。」という意味です。 |
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7 これじゃあ、いぶくて、いぶくて、しかたがねえ。 | ||
「いぶい」とは、「煙(けむり)が目にしみる」ことをいいます。 「これじゃあ、煙(けむ)ったくて、しかたがない。」といった意味です。 |
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8 皿(さら)が、うっかけたから、うちゃあってきた。 | ||
秩父では、「欠ける」という言葉の前に、接頭語がついて「うっかける」といういいかたをします。 「うちやぁる」とは、「捨てる」という意味です。 「皿(さら)が、壊(こわれ)てしまったから、捨(す)ててきた。」という意味です。 |
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9 あの子は、むかしっから、おこんじょな子だったよ。 | ||
「おこんじょ」、または「おこんじょう」とは、「意地悪(いじわる)」という意味で、特に女の子に対して使います。 「あの子は、昔から、意地悪(いじわる)な女の子でしたよ。」といった意味です。 |
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10 きょうは、からっ茶しかねえが、飲んでってくんな。 | ||
「からっ茶」とは、お菓子などの「お茶うけ」がなく、お茶だけという意味です。 「きょうは、お菓子がなくて、お茶しか出せないが、飲んでいってください。」という意味です。 |
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11 そんなぎょうさのわりいことをするもんじゃぁねえ。 | ||
「ぎょうさ」とは、「行儀(ぎょうぎ)」のことです。 「そんな、行儀(ぎょうぎ)の悪いことをするものではありませんよ。」という意味です。 |
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12 こないだ、かんじんよりを作ろうとしたら、うまくできなくて苦労したよ。 | ||
「こないだ」とは、「この間」という意味で、「かんじんより」とは、「こより」のことをいいます。 「このあいだ、『こより』を作ろうとしたら、上手(じょうず)に作れなくて、苦労(くろう)した。」という意味です。 |
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13 うちにいても、さんざになったから、出てきたよ。 | ||
「うち」とは「家」のこと、「さんざ」とは「飽(あ)きる」「たいくつする」などという意味です。 「家に居ても、たいくつになったから、遊びに出てきました。」という様な意味です。 |
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14 このお下地(したじ)は、少し、うすかあ、ねえけえ。 | ||
「お下地(したじ)」とは、うどんやソバの汁(つゆ)のことをいいます。 「このソバの汁(つゆ)は、少し、味が薄くないですか。」という意味です。 |
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15 うちのせがれも、ちかごろ、じゅうくう、いうようになって、しかたがねえ。 | ||
「せがれ」とは、「息子(むすこ)」のことをいいます。また、「じゅうくう」とは、「生意気(なまいき)な」という意味で、「しかたがねぇ」とは、「しょうがない」という意味です。 「家の息子(むすこ)も、最近、生意気(なまいき)なことをいうようになって、困ったものだ。」というような意味です。 |
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16 せえがでるねえ。 | ||
「せいがでる」とは、仕事などを一生懸命やっている様子をいいます。 「一生懸命(いっしょうけんめい)仕事をしていますね。」という様な「あいさつ」言葉です。 |
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17 きょうは、おきゃくの、せっちょうでつかれた。 | ||
「せっちょう」または「おせっちょ」とは、「世話(せわ)をする」という意味です。 「きょうは、お客さんの世話(せわ)をして疲れた。」といった意味です。 |
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18 こんなに人がいちゃあ、ほりねえ。 | ||
「ほりねえ」とは、「ほりない」のなまりで、「はずかしい」という意味です。 「こんなに多くの人がいるのでは、はずかしい。」といった意味です。 |
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19 こりゃあ、なから、よいじゃあねえ、しごとだ。 | ||
「なから」とは、「かなり」という意味で、「よいじゃあねえ」とは、「よういではない」という意味です。 「これは、かなり、よういではない仕事だ。」といった意味です。 |
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