南天山
- なんてんさん -
標高1483m
(2005年5月18日)

【コース】鎌倉橋→方円ノ滝→尾根コース→山頂→西の肩→営林小屋跡→鎌倉橋

【南天山山頂から見た両神山方面の眺め
南天山は、旧大滝村の中津川地区からの登山道が整備されています。

山頂近くには、実は急峻な岩稜があるのですが、人里からだとどの山か特定しづらい奥まった山で、未だに山容はよく判りません。

バスや電車のルートから遠く、マイカーがないと登山口に着くまでが大変なためか、いつも静かな雰囲気の山です。

「南天」といえば「難を転じる」に通ずる幸運の木。

「南天山」という縁起の良い名前の山として、以前から気にはしていたのですが、滝沢ダム建設のために中津川周辺は道路工事が激しく、なかなか登れないでいました。

しばらくは仕事が忙しく、せっかく買った新しいザックもろくに使えないままだったのですが、新緑に輝く地元の山々を見ているうちにとうとう我慢できなくなり、無理やり時間を作ってなんとか行ってきました。

途中、八丁峠の登山口2箇所を通り過ぎましたが、狭い駐車場は車が一杯で、両神山は賑やかなようでした。

一方、南天山の駐車スペースには先行者のデリカが一台止まっているだけなので、深山の静寂を期待できそうな感じです。


中津川の集落を通りすぎ、ダートをしばらく行くと目印の橋が見えてきました。

鎌倉橋です。

この橋、昭和35年3月竣工だそうです。

橋のたもとに道標の立つ登山口から、登山開始です。
しばらくは、いくつもの滝が流れる鎌倉沢に沿って登ります。

道はしっかりと整備されてあり、幾度も丸木の橋を渡り、鎖場で滝を巻いて徐々に登っていきました。
途中、ツツジらしききれいな花が出迎えてくれました。

丁度時期がよかったらしく、新緑と花、それにせせらぎの音が快い感じでした。
「方円の滝」です。

この沢では最も大きな滝でしょうか。

大きいわりには意外と静かな面持ちの滝です。

中ほどに、方円氏が入って修行したといわれる穴が見えます。

この穴の中がどうなっているのか、なんとかのぞこうとしたのですが、どうしても下からは見ることができません。

岩壁を攀じらないと無理そうなので諦めました。
やがて沢沿いの道は、道標の立つ分岐に行き当たりました。

右に行けば山コース、左に行けば沢コースだそうです。

このコースにはわずかなバリエーションがあると下調べしていたので、予定通りです。

ここは右の道へ進みました。

すぐに水の枯れた沢を渡り、南天山にとりつきます。

そう、実はここまではアプローチとしての沢歩き。

ここからが南天山の始まりです。
道は杉林の中をつづら折りで急登しています。

久しぶりに登山する身にとってはなかなかきつい登りです。

こういう道は、急がずにゆっくり登るのがコツ。

ということで、カタツムリのようにゆっくり登りつづけていきます。

やがて植生は変わり、コメツガの林になってきました。
稜線に到達しました。

初めて、北方の視界が開け、群馬方面の山々が望めます。

道標があり、稜線を東へ進めば山頂。

西へ進めばわずかなバリの沢コースへつながっています。

下りは余裕があれば沢コースを通ってみようか、などと思いながら山頂へ向かいます。
この山は、以前山火事があったそうです。

山頂に近づくと、いくつかの炭化した切り株が残っていて、災害の記憶を物語っています。


南天山は両神山系の山にふさわしく、険しい岩稜を持った山である、といわれているのですが、このあたりまで来てやっと、その「険しさ」の片鱗がうかがえるようになりました。
山頂付近は急に岩だらけになります。

山頂だけにこんもりと岩を積み上げたような感じです。

が、それは中津川から登った場合の印象のようで、実際に山頂に立ってみると、その先に東へと続く稜線や北面側は、実は急峻な岩場であることが判りました。
相棒の犬と一緒に、登頂記念撮影。

かつての山火事の影響なのかわかりませんが、山頂周辺の立ち木は多くが枯れていて、360度すばらしい視界が開けています。

特に両神山方面は良く見え、剣が峰から八丁峠、赤岩尾根へと連なっていく様子が良くわかります。

双眼鏡があれば、もっと展望を楽しめたな、という気がしました。


山頂より東は熟達者のみに許される上級ルート、ということで少し分け入ってみましたが、岩と藪に阻まれて、とても犬連れで進めるような地形ではありませんでした。

いつまでも景色を眺めていたいような気分だったのですが、20分くらいいたところで雨粒が来襲してきたので、追われるように下山しました。
山頂で見つけた板切れ。

子供の寄せ書きなのか、いろいろとマジックで書いてあります。

古いので字が判読できなかったのですが、後でPCを使って解析(?)してみたところ、「第4回夏休み長期自然学校 10泊11日の中間」と書いてあるようです。
下山途中、沢コースへの分岐の少し先で撮影した花です。

ツツジの一種?

花の名前はほとんど知らないのですが、この株はきれいだったので印象に残りました。
沢コースを下る途中で、営林小屋の跡地らしき石垣を発見しました。

珍しいので立ち寄ってみましたが、建物は完全に無く、建材が積み上がっているだけでした。

小屋の跡地には、往時の生活を偲ばせるゴミが、風雨に晒されていました。

唯一残っていた家電の洗濯機は、東芝製のようです。

ここまで電気がきてはいなかったようですが、電源はどうしたのでしょう?

発電機を使ったのか、あるいはこの洗濯機はゼンマイ式なのか、そういえばなにやらハンドルもついています。

そして、ぺヤング「味の大関・しょうゆ味」の袋が!

昭和41年発売の、全国初の15円ラーメンなのだそうですが、私は食べたことも無く、見たのも初めてでした。

この貴重なゴミが末永くこの場に残りますように、とそっと元に戻しておきました。

やがて沢が遥か下方に離れ、曲がりくねって登山道に大きく乗りだしている木が見えてくれば、終点は間近です。

12時ごろから登り始めたため、下山してくる2人連れとすれ違っただけで、あとは誰とも会わない静かな登山でした。

歩行時間は登り2時間位で、体力的には軽めの山ですが、中津川渓谷の深奥だけあって、かなり山深いところです。

熊出没の看板もあり、熊鈴は必要でしょう。