奥秩父環境フォーラム ’98の報告 

奥秩父環境フォ−ラム開催報告                          

環境保護委員会 金田 安生

啓発委員会 萩原 良朗

 奥秩父連山の中心である甲武信岳の周辺2100ヘクタ−ルが、林野庁によって恒久的に森林生物を保全するために「森林生物遺伝資源保存林」に指定されたことと、国道140号が山梨−埼玉を結び、一躍ドライブコ−スとして脚光を浴び、予想されたとはいえ多くの自動車の往来が、奥秩父の動植物に何らかの影響を与えようとすることが考えられることから、秩父の環境を考える会は3年間にわたって生態系保護活動を展開することになりました。その活動の一環として第1回環境フォ−ラムが開催され、成功裏に終わることができました。以降環境フォ−ラムを振り返り報告します。

98/奥秩父環境フォ−ラム開催要項 テ−マ

    奥秩父の自然を考える

        ー「いのちの森、水を21世紀へ」森林生物遺伝資源保存林−

趣 旨

 荒川の源流は、埼玉・山梨・長野3県にまたがる甲武信岳に端を発し、その豊かな水量は奥秩父の原生林によって支えられています。林野庁は甲武信岳周辺2100ヘクタ−ルを「森林生物遺伝資源保存林」として指定し、森林資源を恒久的に保全しようとしています。しかし、当地域は首都圏に近く、本年の雁坂トンネルの開通にともない一段と都会からのアクセスが容易となり、その生態系の保護については困難が予想されます。

 地域の住民と環境NGOが行政と一体となって、パ−トナ−シップにより、豊かな奥秩父の自然保護活動を考える集会になればよいと思います。

 

日 時  平成10年11月23日(祝日)11:00〜15:15

    10:00に西武秩父駅前広場の送迎バスに乗車願います。

会 場  大滝グリ−ンスク−ル

    秩父郡大滝村大滝5944−2 рO494−55−0014

参加費  無料。ただし昼食代として600円を当日集金いたします。

主 催  秩父の環境を考える会

協 賛  荒川流域ネットワ−ク/埼玉県生態系保護協会/秩父市広域市町村圏組合/隅田川市民交流実行委員会/ツキノワの会/荒川学舎・秩父/秩父地域環境問題連絡協議会/大滝村くらしの会/大滝村森林組合/ボ−イスカウト秩父第1団

 

内 容  11:00 開会/オ−プニングテ−マ別ワ−キング

その1 山に入ってアニマル・トレッキング

    指導者 町田 和彦氏、斉藤 貴氏、平 誠氏

その2 観測機器をさわってマスタ−

    指導者 野沢 博美氏、内藤 定芳氏、山中 明光 氏

その3 山村のごちそう「アワの餅つきと赤米のおこわ」

    指導者 熊崎 博夫氏、大畑 忠夫氏、高野 和之氏 大滝村くらしの会

12:15 昼食

13:00 全体集会

  講演  山中 徳治氏(甲武信小屋管理人)

    「甲武信岳の自然を語る」スライドとお話

14:00 パネルディスカッション

    「奥秩父の森林生態系保護活動にどう取組むか」

  コ−デネ−タ− 新井 雅夫氏(元東京農工大学農学部林学科教授)

  パネラ−千島 茂氏(大滝村村長) 山本 正史氏(荒川流域ネットワ−ク事務局長)新井 憲治氏(埼玉県立   秩父農工高等学校森林科学科課長)

  レポ−タ−岩田 豊太郎氏(奥秩父調査プロジェクトチ−ム・チ−フ)

15:14 閉会

 

参加申込み

 11月15日迄に、住所・氏名・電話番号・参加希望人員数を明記の上ハガキまたはFAXで事務局まで申込んで下さい。先着100名にて〆切ります。

啓発(広報)活動

 今回の環境フォ−ラムを開催するにあたり、どれだけ多くの一般市民に環境保護の大切さを知ってもらい、どれだけ多くの仲間を参加させられるか!が大きな課題でありました。関心のない人達へ環境保護の大切さをアピ−ルするために、奥秩父甲武信小屋管理人の山中徳治さんが撮影した荒川源流の写真をバックに「森林生物遺伝資源保存林『いのちの森、水・・・21世紀へ』」をキャッチコピ−にした奥秩父環境フォ−ラムの開催広告を作成、秩父郡市全域へ主要日刊紙に折り込み広告を入れて、家庭に直接「環境フォ−ラム開催」の情報を流してきました。また、秩父郡市内を循環する主要路線バスと秩父鉄道の全車両に中吊り広告を掲載(2週間)し、秩父を訪れるハイカ−や旅行者・通勤利用者にも開催情報を流し、参加を呼びかけてきました。

 秩父地域の環境保護団体が、これほどの広報活動を行ったということは過去には例を見ません。この広報活動が成功するかどうか一抹の不安もありましたが、森林生物遺伝資源保存林に指定された奥秩父の甲武信岳周辺2100ヘクタ−ルが秩父にとって、そして日本にとって、どれほど大切な地域であるかを、多くの人達に知らしめられただけでも効果はあったと考えます。今回は予算の制約上、折り込み広告と中吊り広告の2種類のみの啓発活動でしたが、今後は継続的な啓発活動が展開できるように、奥秩父の主要な観光スポットや人々が集まる地域・建物に、奥秩父は大切な地域であることをアピ−ルする掲示版の設置なども検討していく必要があると思いました。

 

開催当日の報告

1、会場は雪・のち晴れ会場である大滝グリ−ンスク−ルには、前日より役員が泊り込みで機材の運び込みやら準備に追われました。雲行きが怪しいと思っていましたが夕方になって雪がチラつき始め、役員一同フォ−ラム当日のお天気を気にしながらミ−テング・交流会、そして就寝となりました。

 開催当日、朝一番にお天気の確認。曇ってはいますが、雪の心配はなさそうです。昨夜に積もった雪もそれほどではなく、予定通り開催できそうです。秩父市内の待機グル−プと電話にて状況報告。予定通り決行することで準備に入りました。

2、移動ル−トにバスを用意午前9時30分。西武秩父駅前広場にチャ−タ−したバス2台が到着。役員が案内の旗を持って参加者を迎えます。10時を少し回ったところで会場(大滝グリ−ンスク−ル)に向かって出発です。バスの中では役員の案内説明やら、当会の広報ビデオを観賞していただきました。・・・参加者の声「あっと言う間に会場に着きました」

3、会場の準備

アニマル・トレッキンググル−プ・・・前日までに計画したコ−スの再チェックです。特に雪が降ったのでコ−スの安全性や動物の足跡の確認と準備に余念がありません。

観測機器グル−プ・・・会場横の多目的広場では大型リモコン・ヘリコプタ−の組立と試運転、空撮のためのカメラのセットと指導者の人達は大忙しです。酸性雨の測定器も準備しました。

山村のごちそう作りグル−プ・・・お餅は前日から材料の米を水に漬けるなど準備が大変です。指導者の人達は前日から準備に追われていましたが、当日も参加者が会場に集まる時間に合わせてアワと米を炊いておかねばなりません。秩父市内の役員と連絡を取りながらの作業が続きます。赤米のおこわやきのこ汁のおいしそうな匂いがグリ−ンスク−ルの厨房に満ちています。

フォ−ラム会場・・・フォ−ラムはセミナ−棟で開催されます。センタ−棟とセミナ−棟が遠いので参加者が迷わないように案内表示を準備したり、参加者が多くなりそうなので会場に机と椅子を増やすなど、予想外の嬉しい準備が進みます。

4、イベントとフォ−ラム

 開催受付は予定通り10時30分に始まりました。が、参加者が移動しているバスが少々遅れ気味です。11時少し回ってバスは到着しました。受付を済ませた参加者は第1部のイベントの指導者の指示にしたがって、それぞれの会場に分散します。

 第1部のイベントが終了したグル−プから大滝グリ−ンスク−ルの用意した昼食を取ります。昼食をすませた参加者がセミナ−棟の第2部のフォ−ラム会場に移動して行きます。会場は混雑してきました。役員が空席をみつけ、参加者の誘導と椅子の準備に追われます。山中さんの「甲武信岳の自然を語る」と題したスライドをまじえた講演に続き、パネルデスカッション「奥秩父の森林生態系保護活動にどう取り組むか」が分野の違う3名のパネリストと1名のレポ−タ−によって熱っぽく進行します。有意義な2時間が、あっという間に過ぎて行きました。

参加者状況  秩父の環境を考える会々員   67名

       協賛団体からの参加      65名

       関係団体からの参加      13名

  チラシ・広告での参加     15名  参加者計  160名

5、全体の反省

 奥秩父の埼玉県側の玄関口に位置する大滝村の山の上に「埼玉県立大滝グリ−ンスク−ル」はあります。奥秩父連山を一望できる素晴らしい場所です。しかし、会場は交通の便から考えると参加者にとっては、この上なく不便な場所とも言えます。会場を選ぶにあたり地理的に不便ということで、どのようにこのハンディを克服するかが課題でありました。このハンディはバスをチャ−タ−することでカバ−できましたが、移動に要する時間の分だけフォ−ラムの時間が制約され、参加者の質問やパネリストの発言時間が制約されるなどの問題点があったと思います。

 とはいえ、今回のイベントは奥秩父の森林生態系をいかに保護していくかが主要な課題であることから考えると、奥秩父に最も近い会場に足を運ぶために、バスに揺られ360°の豊かな大自然に接し、自然の美しさと大切さを感じることができたことで、目的の半分は達成できたとも考えます。参加した子供たちにも、大滝の大自然は素晴らしい思い出を作ってくれたものと思います。大滝グリ−ンスク−ルの職員や関係者の皆様には大変お世話になりました。紙面を借りて心より御礼を申し上げます。

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