ネズミのはなし・会報6号

斎藤 貴

 

 今年は子年です。 干支にちなんでネズミのお話をしましょう。 ネズミは日本の哺乳類では、 コウモリ類に次いで種類数が多く、 ドブネズミに代表される家ネズミとアカネズミに代表される野ネズミがすんでいます。 野ネズミは、 尾の短いものと尾の長いものに大きく分けることが出来ます。 秩父地方には6種類の野ネズミがすんでいますが、 その内、 尾の短いものはハタネズミ、 カゲネズミ、 ヤチネズミ、 尾の長いものはアカネズミ、 ヒメネズミ、 カヤネズミとちょうど半分ずつになっています。

 それぞれの代表選手をご紹介しましょう。

ハタネズミ

 顔が丸くてかわいい顔をしていますが、 ときおり異常発生をして農作物に大きな被害を与えるネズミです。 ハタネズミが大発生出来るのはなぜでしょうか。 10年ほど前までに私と松山高校生物部の生徒が飼育した研究によると、 妊娠期間は21日と短く、 最高で9匹の子を産みました。 その上、 雌は出産後すぐに交尾して妊娠することが可能で、 291日間に14回も連続して出産した雌もいました。 最も長生きした固体は1,536日間も生きましたし、 1,300日目に雌を妊娠させた雄や、 1,024日目に子を産んだ雌もいました。 (写真 ハタネズミ)

 子が性的に成熟するのも早く、 一番早い雌は生後55日で出産しました (妊娠期間を21日とすると生後34日で妊娠したことになります。他の研究者は生後35日目に出産した固体を報告しています)。 これがネズミ算と言われるハタネズミ大発生の秘密なのです。

 幸い、 秩父地方には少なく、 今までのところは武甲山地域で3ケ所、 小鹿野町で3ケ所位しか生息地は知られていません。 秩父地方に少ないのは、 同じ様な生活をするカゲネズミが優勢なためだと考えられています。

カヤネズミ

 日本で最も小さく、 かわいらしいネズミです。 おとなでも体長が6、 尾の長さが7、 体重が6位しかありません。 関東より南の本州と九州にすむ、 主として暖かい地方のネズミで、 夏から秋にかけてはススキやチガヤなどの葉を裂いて、 小鳥の様な球形の巣を作ります。 (写真 カヤネズミの巣)

 埼玉県内の平野部では開発によってほとんど生息していませんが、 小川町や江南町の丘陵地の休耕田には、 少なくないことが最近の私達の調査で判ってきました。

 冬の寒さが厳しい秩父地方にはほとんど生息していないと思っておりましたが、 昨年からの調査で小鹿野町や秩父市の尾田蒔、 別所、 久那地区で数ケ所ずつ生息地を確認することが出来ました。

 今後、 秩父地方でもさらに多の生息地を見つけたいと思っております。 会員の皆さま、 休耕田で写真の様な巣を見つけましたら、 ぜひお知らせ下さい。 宜しくお願いいたします。

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