あれは間違いだったでは困ります

 

秩父の環境を考える会会長 石 川 友 一

 

 先日アメリカの内務省開墾局総裁のダニエル・ピアードさんが、 来日しました。

 新聞記者の取材に対して、 次のように語っていました。 「ダム建設の時代はもはや終わった。 今や環境への負担が少ない用水対策を模索する時代である」 と。

 国のダム建設を推進している第一人者の発言ですから、 これはまったくの驚きです。

アメリカでは、 今、 大きな転換期を迎えていることを示すものです。 更に、 アメリカでは長年のダム建設が社会的に高くついた失敗だったと言明。 その理由として、 膨大なダム建設費用と運用費は償還できないことがわかった。 ダム建設による川の汚染や湿地の消滅。 などと述べ、 その上で 「生態系への影響や文化の問題など、 市民運動から提起されてきた批判に十分に耳を傾けなかった結果である。」 と話していました。

 さて、 私たちの秩父では、 二瀬ダムに続いて浦山ダム、 滝沢ダム、 そして合角ダムと、 長期にわたる多くの人たちの尽力と、 地元民の協力によって、 ダムの建設が進められていますが 「ダム建設は時代遅くれであり、 はやダム建設の時代は終わった」 といわれては、 身も蓋もありません。 マサカと思う気持と同時に、 一つの事象が重なり合って思い出されます。

 戦後の日本では、 一貫して 「山を緑に」 と、 スギ、 ヒノキを植え育ててきました。 そして50年。 今になって 「針葉樹林は山に保水力が乏しく、 そこに生存する生物相も貧困となる」 広葉樹林の植林を推進しなかった 「我が国の林業行政の大きな誤りであった」 といわれる昨今であることを考え併せる時、 複雑な気持になります。

「秩父は首都圏の水ガメ」 と持てはやされ、 ダム工事が目白押しに進められていますが、 何十年か後 、 子供たちの時代になってあれは間違いだったであっては絶対にならないと。 しっかりとして見守っていきたいものです。 今年は 「荒川」 を重要課題として取り組む考えです。

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