光学定数測定の必要性と利点

光学定数を測定することの必要性と利点

1 ある物質の光学定数を知るためには、公表されている文献や書物他膨大なデータがあるではないか?と当然考えられます。金属、半導体、絶縁体で、元素や化合物の多くについては、信頼できるデータは勿論あります。バルクの値は、物質が特定されれば、既存のデータを利用できます。薄膜ということになると、同じ呼び名の物質であっても、組成、成膜方法、成膜条件、膜厚、経時変化等によって光学定数の値が変化することは、良く知られております。例を挙げますと、表示素子に用いられるITO(Indium Tin Oxide)、リソグラフィに用いられるハーフトーン位相シフトマスク用薄膜物質であるモリブデンシリサイドなどは組成を明確に指定しないと意味がありません。この場合任意の組成についての光学定数のデータは普通ありません。また、これらの物質は、同じ組成でも、成膜方法や成膜条件によって光学定数の値は大きく変化します。したがって、初期の結果を得るには、どうしても光学定数の測定をすることが必要になる状況が多々あります。

2 光学的性質が関係する新材料を開発しようとすると、当然、新材料の光学定数のデータはないので測定が必要になります。光学定数の測定は比較的簡便なので、特許の明細書などを書くのに大変有用です。なお、光学定数を第一原理から計算するなどは、論外です。公表されている光学定数のデータは、すべて実測によっています。

光学的性質が関係する新材料の開発には、光学定数の測定が必須であり、且つ、有用です。

3 光学定数の測定は、光学的方法によって測定されるので、実際上ほぼ、非破壊的測定であり、多くは簡単なので、一般の物性測定や物性評価の一つとして応用できます。例を挙げれば、薄膜の密度と屈折率、消衰係数または吸収率と導電性の間の相関性は、良く知られている通りです。

4 単層あるいは、多層薄膜の光学的性質たとえば、反射率、透過率、吸収率、光学濃度、

反射色、透過色等、はいずれも光学定数と、各層の膜厚から計算できます。

製品について、これらの光学的性質が必要であれば、光学定数と膜厚を評価すれば、十分であるということになります。光学膜の膜設計には、光学定数が必須ということになります。誘電体多層薄膜の光学膜設計には、実際上光学定数の公表データでことが足りる場合が少なくはありませんが、吸収膜については、公表データだけでは不十分と考えられます。

ハーフトーン型位相シフト膜への応用を考えると、これは、吸収膜を扱うことになり、膜の透過率と位相差、反射率まで仕様を満足しなければならず、正確な光学定数の値が必要になります。

5 以上が、光学定数を測定することの必要性と利点です。